中古工具屋歴20年の中古工具生き字引にマキタの新型インパクトTD173と前モデルのTD172の比較をした雑感を教えてもらいました。
教えてくれた人
【中古工具の生き字引】
中古工具の世界で20年。新しいものが発売されても、今使っているものが壊れない限り、買い換えられないザ・昭和人間。バブル世代には懐かしい響きの三菱車ディアマンテワゴンを20年間乗り続けて、ディーラーの人を困らせた過去を持つ。
口癖は『すべての職人さんをリスペクトしています』
ベテランの中古工具の生き字引さんにマキタのインパクトの新旧比較記事をお願いしたら、インパクトの歴史から語り始める(ありがち)
編集「生き字引さん、すみません、マキタの新型インパクトのレビュー記事を書いて欲しいんですけど・・」
生き字引さん「ええ?そんなの、なんか今更っていうか、○※△■?!$%・・・・・」
編集「じゃあ、よろしくお願いします!(という名の業務命令)」
生き字引さん、インパクトの歴史について大いに語る
昔みたいに各社がこぞって新型のインパクトドライバーを出すたびに夢中になるということはないですね。といっても今はマキタ1強の時代になりましたが。
インパクトの型式がTDの120番台だった頃からTDの130番台へと移った頃が最もアツかったですね。
TD120番台以前の機種は、懐かしきニッカド電池の時代でした。
生き字引さん、バッテリー革命について語る
充電インパクトの世界では30年もの歴史を誇ったニカド電池の時代もようやく終わりに向かうことになります。そう、リチウムイオン電池、ではなく、ニッケル水素(Ni-MH)電池の登場です。
ニッケル水素電池は、旧来のニッカド電池の2.5倍の容量を持ち、なおかつニッカド電池との互換性も持たせやすかったため、次世代型のバッテリーとして大いに期待されました。
しかしそれは、彗星のごとく現れたリチウムイオン(Li-ion)電池の登場によって、あっけなくなかったことにされてしまいました。ほんの1年くらいのことでした。
全職人が泣いた! 色んな意味で‥
リチウムイオン電池の登場は、まさにバッテリー界の革命でした。従来の電池とは比較にならないパワフルさ!
よりパワーを必要とする充電工具、そのパワーは圧倒的な効率を生み出しました。
例えば、ネジ打ち。ネジ打ちのスピードがあがるというということは、同一時間内で何本ビスが打てるか、というとてもわかり易い結果に結びついてくるわけです。
古いニッカドの機種で作業していれば、当然置いてけぼりを食うわけです。
わたくし(生き字引さん)も、当時で言えば最新に近いニッケル水素の機種TD122を使っていました。すると、当時最新のリチウムイオンのTD130DRFXを買った先輩にどやされるのです。「おい!チンタラするなよ!」と。
マキタ1強時代へ
各社が競い合い、マキタが現状TOPとなるまでには、激しいライバル間の新製品競争もありました。
個人的には、マキタが出したTD131という機種が憎たらしいほどにタフにできていたため、ここで各社との差が一気に広がったのではないかと推察しています。電気販売店のお付き合いがあるパナソニック製品を使う人を除いては、どんどんマキタ製品への買い替えが進んでいったようです。
ただ、そうした新製品が出てきては、買い替える、という流れが続いたのは、先々代のTD171くらいまでではなかったでしょうか。先代のTD172も、正直なところ目新しさという意味ではかなり薄めになり、その2年後に登場と相成ったTD173についても、驚く点もなく正直マイナーチェンジと言う感覚でした。
毎回毎回新製品の度に上がり続けるスペックも、どこかでは頭打ちとなってしまいます。それが2018年に発売されたTD171だったのではないでしょうか…
それでも欲しいのです…TD173
新製品が発表される度 毎回思うのですがじっと我慢の10年です。
私の愛機は 時代遅れのベーシックモデル TD135D(14.4V3Ah)
壊れてくれないんです。
私のような素人に剛毛の生えた人間(素人の50倍は仕事する人間)でさえ、
職人の仕事量の1/100にも及ばず10年使っても壊れないんです。
昭和の人間ゆえ 壊れなければ買い替えしません。
10年買っていないからこそ、職人の皆さんよりもずっと、マキタの新型欲しいんです。
TD172の時も欲しい欲しいとそう思ったので、今回の微妙なマイナーチェンジを
冷静に、だけど主観を交えて判断してみたいと思います。
単純なスペック比較をしてみても、主要スペックに変化はありません。強いて言えば長さが3mm、高さが2mmサイズダウンしたくらいです。
見た目の違い
ぱっと見のデザインはかなり似通っているので、「新機種買ってやったぜ!」的なマウントはとりにくそうですね。
大きな違いはやはり見い出せませんが、メーカーによるとバッテリーの重心をよりセンターにしたとのこと。確かに。この辺は、もしかしたら使用感という部分で変化が出るかもしれませんね。
(手前173・奥172)
後ろ側を壁にくっつけてみると、重心の変化がよく分かります。隅打ちなどはしやすくなったかもしれません。僅かな違いかもしれませんが、この僅かな違いでビスが舐めたりしますので重要な違いですね。
写真では分かりにくいですが、肉眼でははっきりとライトの明るさに違いがあります。173は眩しいくらいの明るさです。メーカーHPでも「い」の一番にうたわれていることですが、業界初の全周発光リングになりました。
これを見ただけで、買い替えを決意する事となるのかも、、、
見た目の自慢はこれだけかな!?
もう一度 前後のビューを確認したところ、重要な点を見落としていました。
コントロールパネルの位置が前から後ろに。ただし、パネルの中身は全く同じのようです。残念。
ネジ打ち作業をしながら、向きを変えずにちょいちょいっとトルク調整ができるようになりました。使い勝手的には一番の進歩を感じそうなところですが、一瞬の休憩も与えてくれないものとなりました。
生き字引さんによる、独断的偏見に基づきまくった総評です。
今回の感想ですが、涙ぐましいメーカーの努力で進歩しているのは確かですが、やはり見た目は大事。
見た目の進化がリングライトだけというのはいいすぎでしょうか…
スペックの上限が見え隠れする今となっては、見た目にもこだわりたいところです。というか、周りの職人に対してドヤりたいです。「新機種かっこいいっしょ!」って。
個人的には、RYOBI(京セラ)のXRシリーズが見た目最高。
MAXのニュートリガー瞬シリーズもシンプルで取り回しの良さそうなデザイン
個人的な印象だけで言ってしまえば、マキタの173はその次くらいでしょうか。
※個人的な主観に基づくもので、あきらかな偏見です。
早く・安全に・確実に仕上げるため作業効率を追求し続ける事に工具の進化がある訳ですが、
働き手からすればもう限界です。
『親方~手の筋肉が、もう追いつきませんぜ』
ということで、もうしばらく愛用のTD135を使い続けることになりそうです…
最後までお読みいただきありがとうございました。