ロードバイクではSTIと呼ばれるブレーキレバーとシフターが一体化した変速機を用いることが主流となっています。
クロスバイクやミニベロのようにフラットバーハンドルのバイクをドロップハンドル仕様に変更したいと考えられる方は一定数いらっしゃると思いますが、今回はSTIのVブレーキ化について実際に試してみた内容を記事に上げさせていただきたいと思います。
今回の愛車の持ち主
チャリオジ
自転車歴30年。ピックアップで自転車について語らせれば右に出るものなし。
所有自転車の台数はなんと!14台(通算所有台数は20台超)!!
奥様からの冷たい視線を華麗にスルーしながら14台の我が子たちを愛でる毎日。
好きな言葉は「クロモリ」。
今回の実験をおこなうのにあたり用意した自転車です。
シクロクロスという未舗装路を走るために作られた自転車になります。
一見するとロードバイクに見えますが、
悪路を走るために通常より太いタイヤを取り付けられるように設計されており、
ブレーキも太いタイヤが装着できるようカンチブレーキというブレーキが使用されています。
悪路走行が可能=耐久性が高く雨に強いため、シティライドでも人気が高く
通勤や普段乗り用として選択される方も最近は増えています。
カンチブレーキ
シクロクロスに何故カンチブレーキが使われるのか?
最近はシクロもディスクが主流になっているため、カンチブレーキをご存じない方も
多いのではないかと思いますので簡単にご説明させていただきます。
まず、カンチブレーキの特徴としてワイヤーのリリースが容易にできるため、
太いサイズのタイヤの換装が可能という点があります。
シクロクロスは未舗装路の走行に合わせて太いサイズのタイヤがセットされている事と、泥詰まりしにくいという特徴のため、カンチブレーキが使用されています。
MTBなども昔はカンチが採用されていたバイクが多かったように記憶しております。
カンチブレーキ採用の自転車が減っていった要因としては、
カンチブレーキは調整箇所が多く、片当たりや音鳴りなどの問題が発生しやすいこと。
コストが安く制動力の高いVブレーキが普及したことで、そのシェアが拡大していったからではないかと考えています。
ブレーキの特長について
以下にブレーキの種類と特徴をまとめました
ブレーキ名称 | 対応タイヤ幅 | ワイヤー引き代 | メリット | デメリット |
キャリパーブレーキ | 細い | 少ない | 調整しやすい,軽量 | 雨天時の制動力が落ちる |
カンチブレーキ | 太い | 少ない | 泥詰まりしにくい | 錆び易く調整頻度が高い |
Vブレーキ | 太い | 多い | 高い制動力 安価 | 調整が少し難しい |
ディスクブレーキ | 太い | – | 高い制動力 リムを傷めない | 調整が難しい 価格が高い |
スポーツバイクで使われるブレーキの種類は主に上の4つになります。
それぞれに特徴があり基本的に互換性がありません。
最近ではロードもMTBもシクロもディスクブレーキを採用しているケースが増えています。ツールドフランスなどのレースシーンでも近年ディスクブレーキを採用するバイクが主流となっており、ここ数年で急激にリムブレーキを採用した自転車は減りつつあるようです。
なお、Vブレーキとカンチブレーキは同じ台座を用いますが、レバーの引き量が異なるカンチ用のブレーキレバーでVブレーキを引くと本来の制動性を得ることができません。
このワイヤー引き量が問題からカンチブレーキと同じくワイヤーの引き量が少ないSTIではVブレーキを使用することはできないとされています。
カンチブレーキにVブレーキをセッティングしてみる
では絶対に使えないのか?というとそういうわけでもなく、
①コンパクトVブレーキ(BR-R353 BR-R573)を使用する。(シマノ非推奨)
②ワイヤー巻き取り量を多くする(見た目が悪くなる)
③ブレーキシューの角度調整やアジャスターなどを用い、
シューとリムのクリアランスを減らし制動力が担保される状態にする。
等の方法があります。
ただし、繰り返しになりますが、メーカーでは基本的にSTIでのVブレーキは推奨されていません。
何故推奨されていないのか・・・・実際にやってみるとよくわかります。
今回特別なパーツを使わず調整のみでためしてみました。
上の写真はSTIでVブレーキ本来の制動力を持たせるためにセッティングを行った写真になります。
通常逆ハの字になっているはずのVブレーキが並行に近い形になっているのがわかります。
この状態だとホイール脱着の為のブレーキ開放が使えないため、ホイールを外す際は
空気を抜くかワイヤー固定のボルトのリリースが必要になります。
続いて角度調整 シュー側の角度調整もかなりシビアになります。アジャスター付きのブレーキシューでないと微妙な角度調整ができません。
つづいてクリアランスです。
リムとブレーキシューのクリアランスはかなりシビアなセッティングを要求されます。
リムとシューのクリアランスは通常1.5~2mm程度にするものですが、
今回のバイクはシューとリムのクリアランスを1mm程度にして運用しています。
クリアランスが1mmだとホイール側の調整もかなりシビアです。
シューをトゥーインにしようとしても難しく、
シューやリムのコンディションによっては音鳴りや片当たりが発生しやすくなります。
結論:STIでVブレーキを使うことはできなくはないが、リスクやデメリットも大きい
STIでVブレーキの制動力を体感できるという点はあります。
しかし、セッティングがシビアである上にカンチやVブレーキのメリットである
ホイールの脱着性能をつぶしてしまうなどデメリットも多いです。
従ってSTIでのVブレーキ運用は万人にお勧めできる方法ではありません。
事実、シマノではSTIでのVブレーキの使用は禁止されています。
プロショップなどに依頼しても安全性が担保できず、
メリット<<デメリットとなり、断られる確率が高いカスタマイズだと思われます。
くれぐれも安全性に留意してカスタマイズを楽しんでいただければと思います。
バザール店ではカスタムのご相談も承っておりますのでお悩みの方はぜひご相談ください!!
プロショップでもわからないようなオールドコンポの互換性や
今回ご紹介したブレーキについてなどの実経験にも続く検証結果などもお答え可能です!!